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映画ランナー

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企画 2018年06月15日

映画に施されたサイン

シネマラマ

 作中では誰も言わないし、説明もしないけれど、意識すれば気づくであろうとある特徴が製作者たちによって映画全体を通して施されることがあります。それは色だったり、マークだったりと映像で示されます。それらのことを具体的に示す言葉はないようですのでここでは便宜的に“サイン”としておきましょう。ここでは映画にまつわる“サイン”を五本の映画を題材に取り上げていきます。

 

  • 『(500)日のサマー』(2009・米)
  • 『シックス・センス』(1999・米)
  • 『ゴッドファーザー』(1972・米)
  • 『ディパーテッド』(2006・米)
  • 『暗黒街の顔役』(1932・米)
  • 『ズートピア』 (2016年:米)
  • 『羊たちの沈黙』(1991年:米)

 

ブルーはあの子の色:『(500)日のサマー』

 この映画はトムという青年の心の中にサマーという女性が住み着いた500日間を描いた映画です。

サマーは青い目が特徴の可愛い女の子です。子供時代の似顔絵でも青くて大きな瞳が強調して描かれています。

この映画における“サイン”は青色です。

 サマーが着ている洋服、ないしはアクセサリーに必ず青色を基調とした何かを身に付けています。これは偶然ではなく、完全に意識しているカラーコーディネートです。これはかなり徹底していて、オープニングのサマーの幼少時代のフィルム映像時にも青いドレスや、青色の折り紙を持っている姿が映されます。

あの感じを映像化

 前回取り上げた『服の色』とも似ていますが、この映画ではサマーの内面や心情を表す使い方をしているわけではありません。これは彼氏側のトムが彼女に対してのイメージカラーとして作品全体が青い色で彩られている事を示唆していると考えられます。

 

 それが最も顕著なのは、初エッチを致した翌朝です。お熱い一夜を明かしてご機嫌な彼は、いつもはなんてことない職場までの道で出会う人々が皆彼に向かって微笑んでいます。やったね(ダブルミーニング)!おめでとう!この幸せ者め!!という感じで街行く人々が皆彼を祝福し、そしてミュージカルが始まります。それまで現実に足のついた映像と物語だったのに、突如唄が流れて、踊りだす展開に唐突過ぎてビックリするかと思いますが、これはいきなりなんかじゃなく、わかる人にはわかるんです。

 

 好きな女の子と手を繋いだり、メールとしたり、デートがいい感じだったり、そして初エッチをした後とかにメッチャ満ち足りた気持ちになって浮足立つあの感じをただ映像化しただけなんですよね。考えてみると笑っちゃうんだけど、それを臆面もなく映画で描くのは良いですね。

 

そして、重要なのはトム君と一緒に踊る道行く人々はみんな青い何かを着ています。彼の空想の産物であるアニメーションの鳥さんも青い鳥です。

 

 

みんな自分に微笑みかけ、世界は青く輝いている。サマーの瞳と同じ色でね。

 

色が変わるとき

 青い色は映画の最後までこの映画の画面を彩ります。サマーが青いジーパンを履いているけれど、映画館の座席でズボンが見えない時には手にペプシコーラを持っていたりして、意図的にサマーと青色を結び付けるようにしています。

 

 やがて、トムは彼女と別れ、新しい人生を歩むために建築会社の面接を受けます。その待合い時間で同席した女性と軽い会話を交わし、お茶に誘うことに成功します。

 

彼女の名前はオータム(秋)。瞳の色はブラウン。そして映画は500日のカウントを1日に戻し、明るい茶色の秋空の絵になって終わります。彼の世界はブラウンの色で新しく彩られていくことを示して。

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